2026-02-13

釉薬(ゆうやく)とは? 種類・原料から選び方まで|陶芸のプロが教える完全ガイド

「釉薬(ゆうやく)」という言葉、正しく読めますか?
そして、それが一体何からできていて、どんな役割をしているのか、説明できるでしょうか?

陶芸において、釉薬は作品の「表情」を決める最も重要な要素です。
しかし、その種類は膨大で、原料や化学反応も複雑なため、プロでさえ一生をかけて研究するほど奥深い世界です。

この記事では、有田焼の材料メーカーとして100年以上の歴史を持つ深海商店が、釉薬の基礎知識から、種類、原料、そして失敗しない選び方までを、初心者にもわかりやすく徹底解説します。

この記事でわかること

  • 釉薬の意味と3つの役割
  • 代表的な4つの種類(透明・マットなど)
  • 釉薬の成分(原料)
  • 「液体」と「粉末」の賢い選び方
  • よくあるトラブル(貫入・ピンホール)と対策

1. 釉薬(ゆうやく)とは? その意味と3つの役割

読み方は「ゆうやく」または「うわぐすり」

専門的には「ゆうやく」と読みますが、職人の間では「うわぐすり」、あるいは単に「薬(くすり)」や「ユウ」と呼ばれることもあります。
英語では Glaze(グレイズ) と言います。

正体は「ガラスのコーティング」

釉薬とは、簡単に言えば「陶磁器の表面に施すガラス質のコーティング材」のことです。
粉末状の原料を水に溶いて器に掛け、1200℃以上の高温で焼くことで、ドロドロに溶けてガラス状の膜になります。

釉薬の3つの役割

なぜ、わざわざ釉薬を掛けるのでしょうか? 主な理由は3つあります。

  1. 装飾(美しさ):色や光沢を与え、芸術的な価値を高める。
  2. 強度(丈夫さ):ガラスの膜で覆うことで、器を割れにくくする。
  3. 防水(衛生的):素地の穴を塞ぎ、水漏れや汚れの染み込みを防ぐ。
もっと詳しく知りたい方へ

「薬」という漢字が使われているのには、化学的な理由があります。語源を知ると陶芸がもっと面白くなります。

▶ 釉薬の読み方は「ゆうやく」!漢字の意味と語源をプロが解説


2. 釉薬の種類(代表的な4タイプ)

釉薬には数え切れないほどの種類がありますが、大きく分けると以下の4つに分類されます。

① 透明釉(とうめいゆう)

その名の通り、透き通ったガラス状の釉薬です。
下の土の色や、描いた絵(染付など)をそのまま見せたい場合に使われます。有田焼や白磁には欠かせません。

▶ 深海商店の「透明釉」一覧を見る

② マット釉(つや消し釉)

光沢を抑えた、しっとりとした質感の釉薬です。
表面に微細な結晶を作ることで光を乱反射させ、モダンで落ち着いた雰囲気を作ります。

▶ 深海商店の「マット釉」一覧を見る

③ 乳濁釉(にゅうだくゆう)

牛乳のように白く濁った釉薬です。
とろりとした柔らかい印象を与え、下の土の色を隠して優しい色合いを作ります。

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④ 結晶釉(けっしょうゆう)

焼成中に釉薬の中で結晶を育て、雪の結晶や花のような模様を浮かび上がらせる特殊な釉薬です。
温度管理が難しいですが、成功すると宝石のような美しさを放ちます。

▶ 深海商店の「結晶釉」一覧を見る


3. 釉薬は何からできている?(原料と成分)

釉薬は、主に「3つの要素」を混ぜ合わせて作られます。
料理に例えるとわかりやすいでしょう。

  • 長石・珪石(ガラスの素) = 「小麦粉」
    釉薬のボディ(骨格)を作ります。これだけでは溶けにくい石の粉です。
  • 灰・石灰(溶かす働き) = 「バター・油」
    高温で長石を溶かし、ガラス化させる役割(媒溶剤)です。木の灰などが使われます。
  • 粘土・アルミナ(粘り気) = 「水・卵」
    釉薬が焼成中にドロドロと流れ落ちないよう、粘りを与えて繋ぎ止めます。

ここに、味付け(着色剤)として「金属(鉄や銅)」を加えることで、様々な色の釉薬ができあがります。

着色原料についてもっと深く知る

有田焼の青(呉須)は、コバルトというレアメタルから作られています。原料の世界を覗いてみませんか?

▶ 呉須の原料は何?天然と合成の違い・成分を解説

4. 液体と粉末、どっちがいい?(選び方)

釉薬には、自分で水と混ぜる「粉末」と、すぐに使える「液体」があります。
結論から言うと、失敗したくないなら「液体」がおすすめです。

  • 粉末:安いが、混ぜるのが大変。ダマが残りやすく、ピンホール等の原因になる。
  • 液体:工場で完璧に粉砕・分散されているため、振るだけでプロの仕上がりになる。
失敗しない選び方の詳細はこちら

なぜ工場で処理された釉薬は失敗が少ないのか?その科学的な理由を解説します。

▶ 釉薬は「粉末」より「液体」が失敗しない理由

5. よくあるトラブルと対策

「見本通りの色にならない」「ヒビが入った」
そんな時は、以下の原因を疑ってみてください。

  • 貫入(かんにゅう):釉薬と土の収縮率のズレで起こるヒビ。
  • ピンホール:素焼き不足や汚れによるガスの穴。
  • 色違い:焼成温度や冷却時間(徐冷・急冷)の違い。

特に「色は焼成条件で変わる」ということを知っておくだけで、対応策が見えてきます。

トラブル解決マニュアル

貫入、縮れ、ピンホール…。7つの代表的なトラブルの原因と対策をまとめました。


まとめ:釉薬を知れば、陶芸はもっと自由になる

釉薬は、単なる材料ではなく、化学と歴史の結晶です。
その性質を知り、正しく選び、使いこなすことができれば、あなたの陶芸作品は劇的にレベルアップします。

深海商店では、代々受け継ぐ知識と技術で、プロ品質の釉薬を皆様にお届けしています。
ぜひ、あなただけの「色」を見つけてください。

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この記事の執筆者

深海宗佑

佐賀県有田町出身。深海家13 代目。株式会社深海商店後継者。先祖は有田焼始祖の一人である百婆仙。熊本大学理学部理学科卒業後、東京の大手経営コンサルティング会社にて勤務。2021年8月に有田町にUターンし、有田焼及び肥前窯業圏の再興を使命に東奔西走する。