2024-08-13
焼き物や磁器について調べると呉須や染付、染錦などなかなか分かりづらい業界特有の用語が沢山出てきます。 そこで今回は、呉須・染付・染錦について解説いたします。

呉須とは

まず呉須についてです。 呉須は原料の名前です。
天然呉須と化学的に作る合成呉須があります。

天然呉須

天然呉須は英語名アスボライト(Asbolite)と呼ばれる石です。
日本では1665年頃から愛知県瀬戸市から多治見、土岐市辺りで採掘されていました。 この天然呉須は尾張藩によって管理されていました。 不純物が多いこともあり、有田焼では使用されていません。

明治初期まで有田焼で使われていた呉須は中国から輸入していました。 この呉須という名前も中国の天然呉須の地方名が由来しているものです。 他には、蘇泥勃青(すまると)や回青と呼ばれるイスラム圏で産出する天然呉須もあります。

合成呉須

合成呉須は日本では明治初期にドイツ人化学者ワグネルの助言の下、深海墨之助・竹治兄弟が開発したものです。 主成分にコバルトを用います。他には、鉄、ニッケル、カオリン等を混ぜて色のバリエーションを出します。

染付とは

染付とは、素焼き(900℃程度で焼成)した白い生地に呉須で絵を描く等の装飾を行った後、透明な釉薬をかけて本焼成(1200~1300℃で焼成)した陶磁器です。
ですので、呉須は原料で、染付はその呉須を使った陶磁器ということです。
染付で描かれる伝統的な文様は沢山の種類があります。

代表的なものとして、
1.植物... 菊、牡丹、梅、松、竹、柳、藤、蔓草類、唐草類、銀杏、柘榴、桃、桐、桜、椿、蓮、菱、菖蒲、葦、薄、蘭、罌粟、桔梗、水仙、芭蕉、棕櫚、野菜、丁字、花卉、草花、草、木賊、折枝花、花束、草束、蚊屋吊草、雌日芝、花盆、樹木、楢柏、葉、花、茗荷、水草

2.動物... 鳥、兎、雨龍、獅子、麒麟、鹿、海老、貝、魚、蝶、虫、蜻蛉、蜘蛛の巣、人物

3.建造物・器物... 東屋、楼閣、家屋、塀、塔、橋、船、旗、網干、柴束、扇面、扇面詰、団扇、矢羽根、熨斗、器物

4.自然... 山、岩、土坡、水、雪、雲、月

5.吉祥・幾何... 宝、玉、八卦、瓔珞、如意頭、如意雲、十字花、唐花、九曜、星梅鉢、捻、巴、丸、鞠挟み、円圏、幾何学文

6.文字... 福寿、福、寿、吉祥字、短冊、国・年号
があります。

染錦とは

染錦は、染付にさらに上絵で装飾し、上絵焼成(700~800℃で焼成)したものです。 上絵は主に金や赤等で装飾されることから錦手とも呼ばれます。 このことから、"染"付+"錦"手=染錦と呼ばれるのです。 ちなみに、上絵と呼ばれるのは、釉薬の上に装飾を施すからです。

まとめ

まとめると、 呉須は原料 染付は呉須を用いて装飾した物 染錦は"染"付+"錦"手 ということになります。 今回は、呉須、染付、染錦の用語について解説いたしました。 呉須の事でご相談がある方はお気軽に深海商店にお問い合わせください。

弊社の呉須をご購入されたい方はこちらのリンクよりご購入いただけます。  

この記事の執筆者

深海宗佑

佐賀県有田町出身。深海家13 代目。株式会社深海商店後継者。先祖は有田焼始祖の一人である百婆仙。熊本大学理学部理学科卒業後、東京の大手経営コンサルティング会社にて勤務。2021年8月に有田町にUターンし、有田焼及び肥前窯業圏の再興を使命に東奔西走する。