合成呉須の原料-コバルトの産出地の解説
ワグネルの指導の元、明治初期に深海平左衛門、深海墨之助、深海竹治によって開発された合成呉須。
この合成呉須は現代では一般的に使用されています。
呉須の青色の事をよくコバルトブルーと呼ぶことがあります。これは、合成呉須の主原料がコバルトだからです。
コバルトは古代エジプトやメソポタミア文明の時から使用されていましたが、化学的には1735年にスウェーデンのブラント氏が発見しました。 コバルトの名前の由来はドイツ語で地の妖精です。
このコバルトはレアメタルと呼ばれ、どこででも産出する物ではありません。 合成呉須の原料であるコバルトの産出地について解説します。
まずは、このレアメタルとは何かについて解説します。
合成呉須の原料コバルトはレアメタル
金属はベースメタルとレアメタルに分類されます。
日本はベースメタル、レアメタルのいずれも、ほぼすべてを輸入に頼っています。 ベースメタルは鉄、銅、鉛、亜鉛などです。 コバルトはレアメタルに分類されます。
このレアメタルは希少金属で、産業界のミネラルと呼ばれます。 レアメタルの定義は国際的には定まってません。 1つをご紹介すると「その金属単体として取り出すことが経済的、技術的に難しい金属」です。
さらに、レアメタルは、「他の元素と合金をつくり、これまでにない性能や機能をもつようになる」という優れた特性を持ちます。コバルトの特性は強磁性、高温耐熱、触媒特性、耐食性を持っています。
コバルトの特性は強磁性、高温耐熱、触媒特性、耐食性を持っています。
コバルトは焼き物の呉須以外の用途として、
・EV(電気自動車)のバッテリーとして用いられるリチウムイオン電池の正極(+)材
・材質強化のため鉄鋼材料などへの添加元素
・鉄とコバルトの合金として、磁気ヘッドの材料
・シリカゲルの中の青い粒(塩化コバルトは水を吸うと青から赤に色が変わるため)
・高速度鋼(ハイスコー)へ添加
・希土類元素のサマリウムとコバルトで構成される磁石(サマコバ磁石) 等
幅広く用いられています。特にEVの需要が急騰するほど、コバルトの価格は飛躍的に上昇しております。 さて、その様な希少金属であるコバルトの産出地について説明します。
合成呉須の原料-コバルトの産出地
世界の国別コバルトの埋蔵量と生産量はこちらです。
世界コバルト埋蔵量(合計 7,100千t)
JOGMEC 鉱物資源マテリアルフロー2021を基に筆者作成
2021年コバルト鉱石生産量(合計 140千t)
JOGMEC 鉱物資源マテリアルフロー2021を基に筆者作成
コンゴ民主共和国が圧倒的にコバルトを埋蔵及び生産しています。
ですので、コバルトの資源は偏在しています。 コバルトは、
・輝コバルト鉱(cobaltite, CoAsS)(コバルトの硫化物及び砒化物)
・ヘテロゲナイト(heterogenite, CoO(OH))(含水酸化コバルト)
・硫コバルト鉱(linnaeite, CoCo2S4)(コバルト及びニッケルの硫化物)
・砒コバルト鉱(smaltite, (Co,Ni)As3-X)(砒化コバルト)
に含まれて、これら(銅、銅-ニッケル、ニッケル)の副産物として生産されます。
コンゴにコバルトが偏在しているため、今後、合成呉須の原料として入手することが困難になる可能性があります。
今回は合成呉須の原料についてご紹介いたしました。
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参考:経済産業省指定のレアメタル47種類。 ※印は希土類元素