釉薬(ゆうやく)とは? 種類・原料から選び方まで|陶芸のプロが教える完全ガイド
「釉薬(ゆうやく)」という言葉、正しく読めますか?
そして、それが一体何からできていて、どんな役割をしているのか、説明できるでしょうか?
陶芸において、釉薬は作品の「表情」を決める最も重要な要素です。
しかし、その種類は膨大で、原料や化学反応も複雑なため、プロでさえ一生をかけて研究するほど奥深い世界です。
この記事では、有田焼の材料メーカーとして100年以上の歴史を持つ深海商店が、釉薬の基礎知識から、種類、原料、そして失敗しない選び方までを、初心者にもわかりやすく徹底解説します。
この記事でわかること
- 釉薬の意味と3つの役割
- 代表的な4つの種類(透明・マットなど)
- 釉薬の成分(原料)
- 「液体」と「粉末」の賢い選び方
- よくあるトラブル(貫入・ピンホール)と対策
1. 釉薬(ゆうやく)とは? その意味と3つの役割
読み方は「ゆうやく」または「うわぐすり」
専門的には「ゆうやく」と読みますが、職人の間では「うわぐすり」、あるいは単に「薬(くすり)」や「ユウ」と呼ばれることもあります。
英語では Glaze(グレイズ) と言います。
正体は「ガラスのコーティング」
釉薬とは、簡単に言えば「陶磁器の表面に施すガラス質のコーティング材」のことです。
粉末状の原料を水に溶いて器に掛け、1200℃以上の高温で焼くことで、ドロドロに溶けてガラス状の膜になります。
釉薬の3つの役割
なぜ、わざわざ釉薬を掛けるのでしょうか? 主な理由は3つあります。
- 装飾(美しさ):色や光沢を与え、芸術的な価値を高める。
- 強度(丈夫さ):ガラスの膜で覆うことで、器を割れにくくする。
- 防水(衛生的):素地の穴を塞ぎ、水漏れや汚れの染み込みを防ぐ。
2. 釉薬の種類(代表的な4タイプ)
釉薬には数え切れないほどの種類がありますが、大きく分けると以下の4つに分類されます。
① 透明釉(とうめいゆう)
その名の通り、透き通ったガラス状の釉薬です。
下の土の色や、描いた絵(染付など)をそのまま見せたい場合に使われます。有田焼や白磁には欠かせません。
② マット釉(つや消し釉)
光沢を抑えた、しっとりとした質感の釉薬です。
表面に微細な結晶を作ることで光を乱反射させ、モダンで落ち着いた雰囲気を作ります。
③ 乳濁釉(にゅうだくゆう)
牛乳のように白く濁った釉薬です。
とろりとした柔らかい印象を与え、下の土の色を隠して優しい色合いを作ります。
④ 結晶釉(けっしょうゆう)
焼成中に釉薬の中で結晶を育て、雪の結晶や花のような模様を浮かび上がらせる特殊な釉薬です。
温度管理が難しいですが、成功すると宝石のような美しさを放ちます。
3. 釉薬は何からできている?(原料と成分)
釉薬は、主に「3つの要素」を混ぜ合わせて作られます。
料理に例えるとわかりやすいでしょう。
-
長石・珪石(ガラスの素) = 「小麦粉」
釉薬のボディ(骨格)を作ります。これだけでは溶けにくい石の粉です。 -
灰・石灰(溶かす働き) = 「バター・油」
高温で長石を溶かし、ガラス化させる役割(媒溶剤)です。木の灰などが使われます。 -
粘土・アルミナ(粘り気) = 「水・卵」
釉薬が焼成中にドロドロと流れ落ちないよう、粘りを与えて繋ぎ止めます。
ここに、味付け(着色剤)として「金属(鉄や銅)」を加えることで、様々な色の釉薬ができあがります。
4. 液体と粉末、どっちがいい?(選び方)
釉薬には、自分で水と混ぜる「粉末」と、すぐに使える「液体」があります。
結論から言うと、失敗したくないなら「液体」がおすすめです。
- 粉末:安いが、混ぜるのが大変。ダマが残りやすく、ピンホール等の原因になる。
- 液体:工場で完璧に粉砕・分散されているため、振るだけでプロの仕上がりになる。
5. よくあるトラブルと対策
「見本通りの色にならない」「ヒビが入った」
そんな時は、以下の原因を疑ってみてください。
- 貫入(かんにゅう):釉薬と土の収縮率のズレで起こるヒビ。
- ピンホール:素焼き不足や汚れによるガスの穴。
- 色違い:焼成温度や冷却時間(徐冷・急冷)の違い。
特に「色は焼成条件で変わる」ということを知っておくだけで、対応策が見えてきます。
貫入、縮れ、ピンホール…。7つの代表的なトラブルの原因と対策をまとめました。
まとめ:釉薬を知れば、陶芸はもっと自由になる
釉薬は、単なる材料ではなく、化学と歴史の結晶です。
その性質を知り、正しく選び、使いこなすことができれば、あなたの陶芸作品は劇的にレベルアップします。
深海商店では、代々受け継ぐ知識と技術で、プロ品質の釉薬を皆様にお届けしています。
ぜひ、あなただけの「色」を見つけてください。
