2026-02-13

呉須(ごす)の色は「石」から生まれる。原料と化学の秘密

「呉須の青色は、一体何からできているの?」
その正体を知ることは、あなたが理想の「青」を作るための第一歩です。

呉須には、鉱山から掘り出した「天然呉須」と、化学的に調合された「合成呉須」の2種類があります。
この記事では、それぞれの原料と、色が生まれる化学的なメカニズムを解説します。

【結論】呉須の正体は「金属の酸化物」

呉須の原料は、主に以下の金属です。

  • コバルト(青色の主成分)
  • (渋みや黒味を出す)
  • マンガン(黒味を出す)

これらを絶妙なバランスで配合することで、有田焼のような美しい染付の色が生まれます。


1. 天然呉須(てんねんごす)の原料

天然呉須の原石 Asbolite

天然呉須は、専門用語で「呉須土(Asbolite:アスボライト)」と呼ばれる鉱物です。
つまり、原料は「石」そのものです。

この石の中には、コバルトだけでなく、鉄、マンガン、銅、アルミニウムなど、様々な不純物が混ざり合っています。
この「不純物」こそが、天然呉須特有の、少し黒みがかった渋い青色(骨董品のような青)を生み出すのです。

産地による違いと歴史

名称 特徴・歴史
蘇泥勃青
(すまると)
イスラム地域産。「回青」とも呼ばれます。明の時代に中国へ輸出され、鮮やかな青を生みました。
中国産呉須 中国産(雲南省など)。江戸時代の日本の染付は、主にこれを輸入して作られていました。
日本産呉須 愛知県(瀬戸・多治見)などで採掘されましたが、不純物が多い。瀬戸藩以外に出されることはなかった。

2. 合成呉須(ごうせいごす)の原料

合成呉須の原料 粉末

現在、一般的に使われているのが「合成呉須」です。
純度の高い薬品(金属酸化物)を人工的に調合して作ります。成分が安定しているため、いつでも同じ色を出せるのが特徴です。

主な配合成分(呉須のレシピ)

以下の成分を組み合わせることで、青色の深みや色調をコントロールします。
これらが焼成時に結合し、「スピネル構造」という結晶を作ることで、美しい発色が起こります。

① 酸化コバルト (CoO) :青の主役

役割:鮮やかな青色を出す
有田焼が「コバルトブルー」と呼ばれる所以です。これ単体だと非常に強い青になります。
融点:1933℃

② 酸化鉄 (Fe2O3) :渋みの名脇役

役割:茶褐色〜黒味を足す
いわゆる「弁柄(ベンガラ)」です。コバルトの鮮やかすぎる青を抑え、落ち着いた紺色にするために加えます。
融点:1566℃

③ 酸化クロム (Cr2O3) :緑のニュアンス

役割:緑色味を足す
単体では緑色(クロムグリーン)に発色します。呉須に少量混ぜることで、色調を緑に変化させます。
融点:2435℃(非常に高い融点を持ちます)

④ 二酸化マンガン (MnO2) :黒

役割:黒くする
天然呉須にも最も多く含まれる成分です。
融点:535℃

⑤ カオリン(粘土) :つなぎの役割

役割:素地との接着剤
色を出すわけではありませんが、呉須が素地(お皿)にしっかり食いつくようにするために混ぜます。

💡 なぜ1300℃で溶けるの?
原料の融点はどれも1500℃以上と非常に高いですが、複数の原料が混ざり合うことで融点が下がる性質(共晶点)を利用し、1300℃前後の焼成でも綺麗に溶けるよう設計されています。


まとめ:理想の「青」は、成分のバランスで決まる

呉須は、ただの青い粉ではありません。
コバルト、鉄、マンガン……それぞれの金属が持つ個性が、炎の中で複雑に絡み合って生まれる芸術です。

深海商店の呉須は、これらの原料を長年の経験に基づいて絶妙に配合し、「誰が描いても美しく発色するバランス」を追求しています。

深海商店の「呉須」コレクション

成分の配合比率を変えることで生まれた、多彩な青色をご用意。
唐呉須(人気)、古代呉須(渋め)、紫呉須(上品)など、あなたの作風に合う色が必ず見つかります。

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参考文献:
大西政太郎『陶芸の伝統技法』理工学社, 1978
瀬戸市『瀬戸市史〈陶磁史篇 第3〉』瀬戸市, 1967

 

この記事の執筆者

深海宗佑

佐賀県有田町出身。深海家13 代目。株式会社深海商店後継者。先祖は有田焼始祖の一人である百婆仙。熊本大学理学部理学科卒業後、東京の大手経営コンサルティング会社にて勤務。2021年8月に有田町にUターンし、有田焼及び肥前窯業圏の再興を使命に東奔西走する。