2026-01-13

「赤い釉薬は食器に使えない」は誤解です!上絵と釉薬の違いを解説

結論:赤い釉薬は安全です

「赤色の釉薬って、食器として使う焼き物に使っても大丈夫ですか?」というご質問をよくいただきます。

答えは「YES」です。安心してお使いください。

この誤解は、昔の「上絵(うわえ)」という技法で使われていた有害物質と、「釉薬(ゆうやく)」を混同されていることが原因です。


なぜ「赤は危ない」と思われているの?

昔の上絵には有害物質が含まれていた

陶磁器には、大きく分けて3つの色付け方法があります:

1. 染付(そめつけ)・下絵で絵を描く方法

  • 素焼きした生地に呉須で絵を描き、その上から透明な釉薬をかける
  • 高温(1200℃以上)で焼く
  • 絵の具が釉薬の下に入るため、ガラスの層で保護される
  • 有田焼の染付(青い絵)が代表例
  • → 安全性が高い

2. 釉薬で色をつける方法

  • 器全体を色のついたガラスのような層で覆う
  • 高温(1200℃以上)で焼く

3. 上絵で絵を描く方法

  • すでに焼き上がった器の表面に絵を描く
  • 低温(800℃前後)で焼き付ける

問題があったのは、「上絵」の方です。

昔の上絵の具には、こんな物質が入っていました:

  • 鉛(なまり):ツヤを出すために使用
  • カドミウム:鮮やかな赤色を出すために使用
  • セレン:同じく赤色のために使用

これらは、お酢や果物など酸っぱいものに長時間触れると、ほんの少し溶け出してしまうことがありました。

だから「赤=危ない」というイメージが広がってしまったんです。

今はどうなっているの?

2009年に法律が変わって、日本で作られる器は厳しい検査に合格しないと売れなくなりました。

  • 上絵の具も、有害物質を使わないものに変わっています
  • 検査方法:お酢に24時間浸けても、有害物質が出ないことを確認

つまり、今の日本製の器は、上絵でも釉薬でも安全です。


釉薬の赤色の出し方、実は3種類あります

釉薬と上絵、何が違うの?

「釉薬なら安全」「上絵なら危険」というわけではありません。

大切なのは、使っている材料と作り方です。

実は、釉薬で赤色を出す方法は大きく3つあります。そしてそれぞれ、発色の仕組みが全く違うんです。


①鉄で作る赤色(飴色〜赤褐色)

一番身近な赤色です

どんな色?

  • 飴色、茶褐色、赤褐色
  • 柿のような渋い赤
  • 温かみのある茶色っぽい赤

何を使うの?

  • 鉄(酸化鉄)
  • 鉄のサビと同じもの
  • ベンガラ(弁柄)とも呼ばれます

どうやって色が出るの?

  • 金属そのものが化学反応で発色します
  • 鉄を釉薬に混ぜて、1200℃以上の高温で焼く
  • すると、鉄が釉薬の中で化学反応を起こす
  • その反応で赤褐色が生まれる

身近な例え

  • 錆びた鉄の色
  • 赤レンガの色
  • 茶色がかった赤色

なぜ安全なの?

  • 鉄そのものが安全な材料
  • 1200℃以上の高温でガラスの中に閉じ込められる
  • 鉄がガラスと一体化するので、溶け出す心配はありません

代表的な釉薬

  • 飴釉(あめゆう):飴色の釉薬
  • 柿釉(かきゆう):柿のような赤褐色
  • 鉄赤釉(てつあかゆう):赤味が強い赤褐色

②銅で作る赤色(辰砂)

高度な技術が必要な美しい赤

どんな色?

  • 血のような鮮やかな赤色
  • 深い赤紫色
  • とても美しく、高級感がある

何を使うの?

  • (10円玉と同じ材料)
  • 釉薬に1〜3%くらい混ぜる

どうやって色が出るの?

  • 金属そのものが化学反応で発色します
  • 焼くときに「還元焼成」という特殊な方法を使います
  • 窯の中の酸素を極端に少なくする
  • すると、銅が化学反応を起こして本来の赤銅色(新品の10円玉の色)に戻る
  • これが釉薬の中で美しい赤色になる

身近な例え

【10円玉で考えるとわかりやすい】

新しい10円玉 → ピカピカの赤銅色(これが還元状態)
古い10円玉 → 緑色に変色(これが酸化状態)

釉薬でも同じ:
還元焼成 → 銅が赤色に
普通の焼成 → 銅が緑色に

なぜ安全なの?

  • 銅そのものが安全な材料(少量)
  • 1200℃以上の高温でガラスの中に閉じ込められる
  • 銅がガラスと一体化するので、溶け出す心配はありません

代表的な釉薬

  • 辰砂釉(しんしゃゆう):血のような赤色
  • 中国の宋時代から伝わる伝統的な技法
  • 難しい技術なので、高級品に多い

③顔料で作る赤色(弊社の釉薬)

最新技術で作る鮮やかで安全な赤

どんな色?

  • とても鮮やかな赤色
  • オレンジに近い赤〜深い赤まで
  • 昔のカドミウム系と同じくらい鮮やか

何を使うの?

  • カプセル顔料(インクルージョン顔料)
  • これは「色の素・顔料」を使った方法です
  • 色の素を特殊なセラミックのカプセルに封じ込めた顔料

鉄や銅との違い

鉄・銅 カプセル顔料
材料 金属そのもの 色の素(顔料)
発色の仕組み 金属が化学反応で発色 顔料の色をそのまま使う
色の種類 限られた色 いろんな色が作れる
焼き方 銅は還元焼成が必要 酸化焼成・還元焼成共にOK

なぜ安全なの?

これは、お薬のカプセルと同じ仕組みです。

わかりやすく例えると:

【M&Mチョコレートと同じ】

M&Mチョコ:
チョコレート → 砂糖の殻で包む → 手が汚れない

カプセル顔料:
色の素 → 特殊なセラミックの殻で包む → 溶け出さない

さらに!

この「カプセルに入った色の素」を、1200℃以上の超高温で焼いて、ガラスのように固めます。

つまり、二重に守られているんです:

  1. 第1の壁:色の素が特殊セラミックのカプセルに入っている
  2. 第2の壁:そのカプセルごと、ガラスのような釉薬の中に閉じ込められる

これなら、お酢でも果汁でも溶け出しません。

メリット

  • 鮮やかな色が出せる
  • 色の種類が豊富
  • 鉛フリー
  • 焼き方を選ばない(酸化でも還元でもOK)

釉薬と上絵、どこが違うの?

わかりやすい比較表

釉薬の赤色 上絵(昔のもの)
焼く温度 とても高温(1200℃以上) 比較的低温(800℃前後)
発色の仕組み ①鉄・銅:金属が化学反応
②顔料:カプセルで封じ込め
顔料を表面に塗る
色の素の状態 ガラスと一体化、または
カプセルでさらにガラスの中
表面に乗っているだけ
使っていません 昔は使っていた
溶け出すか ほぼ溶け出しません 昔のものは可能性あり
例え 飴玉の中にラムネ 飴玉の表面にシールを貼った感じ

釉薬の赤色が安全な理由まとめ

①鉄の赤色

  • 鉄そのものが安全な材料
  • 金属が化学反応で発色
  • 1200℃以上でガラスと一体化
  • 人間の体にも必要なミネラル

②銅の赤色

  • 銅そのものが安全な材料(少量)
  • 金属が化学反応で発色
  • 1200℃以上でガラスと一体化
  • 還元焼成で美しい赤色に

③カプセル顔料の赤色(弊社)

  • 色の素をセラミックのカプセルで封じ込め
  • さらに1200℃以上でガラス化
  • 二重の封じ込め構造

共通点:すべて高温でガラス化

  • どの赤色も、1200℃以上の高温で焼く
  • ガラスのように固まる
  • 材料が外に出ることはない

よくある質問

Q1. 赤色の器を見たら、どっちか見分けられますか?

A. 簡単に見分けられます

釉薬の器

  • 表面がつるつる、ガラスみたい
  • 色が器全体に均一
  • こすっても色は落ちない

上絵が描いてある器

  • 釉薬の上に、絵や模様が描かれている
  • 絵の部分を触ると、少しだけ凹凸がわかることも
  • 今のものは安全な絵の具を使用

Q2. 深海商店の釉薬はどのタイプですか?

A. カプセル顔料を使った最新タイプです

弊社の赤色釉薬は、カプセル顔料(インクルージョン顔料)を使用しています。

鉄や銅の赤色と比べて:

  • より鮮やかな赤色が出せる
  • 色の幅が広い(オレンジ寄り〜深紅まで)
  • 二重の封じ込め構造でさらに安全
  • 焼き方を選ばない

Q3. 鉄や銅と、カプセル顔料、どっちが安全?

A. どちらも安全です

鉄・銅の場合:

  • 金属そのものが安全
  • 化学反応でガラスと一体化

カプセル顔料の場合:

  • 色の素を二重に封じ込めている
  • セラミックカプセル+ガラス化
  • 物理的に外に出られない構造

どちらも、1200℃以上の高温でガラス化するので、安全性は同じレベルです。

Q4. 赤以外の色は大丈夫ですか?

A. はい、大丈夫です

実は、昔に問題があったのは主に「赤」でした。

理由:鮮やかな赤を出すのが難しく、有害な材料を使わざるを得なかった

でも今は、どの色も安全な材料と技術で作られています。


まとめ:安心してお使いください

釉薬の赤色は3種類、発色の仕組みも違う

①鉄の赤(金属が化学反応)

  • 飴色、茶褐色、赤褐色
  • 鉄が化学反応で発色
  • 温かみのある渋い赤

②銅の赤(金属が化学反応)

  • 血のような鮮やかな赤
  • 銅が還元焼成で化学反応
  • 高度な技術が必要

③カプセル顔料の赤(色の素を封じ込め)

  • とても鮮やかな赤
  • 二重の封じ込め構造
  • 最新の安全技術

すべてに共通する安全性

1200℃以上の高温で焼く
ガラスのように固まる
材料が外に出ない
国の基準をクリア
鉛は使っていません

「赤=危ない」は昔の話

問題があったのは、上絵に使われていた鉛・カドミウム・セレンです。

釉薬の赤色は、発色の仕組みも構造も全く違うので安全です。

 

赤系の釉薬はこちらからご確認いただけます。


この記事の執筆者

深海宗佑

佐賀県有田町出身。深海家13 代目。株式会社深海商店後継者。先祖は有田焼始祖の一人である百婆仙。熊本大学理学部理学科卒業後、東京の大手経営コンサルティング会社にて勤務。2021年8月に有田町にUターンし、有田焼及び肥前窯業圏の再興を使命に東奔西走する。